惑星間不定期通信

小説を書いています。本や映画の感想やその他なども書きます。

2015年読書記録 42~50冊

 前回の続きです。

 

これはペンです (新潮文庫)

これはペンです (新潮文庫)

 

  ■42冊目『これはペンです』円城塔

叔父は文字だ。文字通り。

この書き出し通りの意味で小説は展開される。文字としての存在である叔父は、書くことと書かれること自体の意味を問うような手紙を送り付ける。ナンセンスな前衛小説としての記述から一転して冒険小説のような展開を見せるそぶりをした後に着地する。表題作のほかに収録されている『良い夜を持っている』は安部公房のような幻想世界を映しており、そちらのほうが好み。

 

 ■43冊目『人形式モナリザ森博嗣

すべてがFになる』がアニメ化され四季シリーズもその対象になるということで、一作目の『黒猫の三角』を読んで止めていたVシリーズを読み始めました。

シリーズ2作目である今作は探偵である保呂草潤平と自称科学者の瀬在丸紅子、大学生の小鳥遊練無、香具山紫子が長野の避暑地を訪れた先で、人形劇を鑑賞中に起きた殺人事件を解決していく。物語の展開やトリックが先読みできてしまい、拍子抜けしながら読書メータに読了を登録しようとしたらすでに読んでいたことが発覚。前に読んでいたことを完全に忘れていました。これぞミステリィ。(違う)

 

月は幽咽のデバイス (講談社文庫)

月は幽咽のデバイス (講談社文庫)

 

  ■44冊目『月は幽咽のデバイス森博嗣

Vシリーズ3作目。今度こそ本当に初読です。トリックに関しては、愕然とするというか無茶苦茶というか、ある意味森博嗣らしい物理トリックでした。どうでもいいですけど舞台が自転車で10分くらいの近所でした。

 

魔剣天翔 Cockpit on Knife Edge (講談社文庫)

魔剣天翔 Cockpit on Knife Edge (講談社文庫)

 

  ■45冊目『魔剣天翔森博嗣

 4作目を飛ばしてVシリーズ5作目。本が手に入らなかった関係で前後しています。

僕はVシリーズで今作が一番好きです。飛行機ショーの最中にパイロットが銃殺。唯一の同乗者だったフリージャーナリストの各務亜樹良に助けを求められた探偵の保呂草は咄嗟に一緒に逃亡してしまうが、警察が彼らを追い詰める。保呂草さん大活躍の回。スパイ映画のような展開がスリリングで良いです。森博嗣の引き出しの広さに感服しました。とにかく保呂草さんがハードボイルドで格好良い。飛行中にパイロットが銃殺という新しい密室シチュエーションが斬新です。へっくんに飛行機の解説をする紅子さんも可愛いし、なんでそんなに飛行機に詳しいのか尋ねられた紅子さんの回答も衝撃的。

 

夢・出逢い・魔性 (講談社文庫)

夢・出逢い・魔性 (講談社文庫)

 

   ■46冊目『夢・出逢い・魔性森博嗣

順番が前後してVシリーズ4作目。タイトルがよく話題になりますね。殺人事件としてのトリックは大したことはないのですが、サブトリックにはまんまと騙されました。保呂草さんが終始蚊帳の外なのでそんなに好きではないです。

 

恋恋蓮歩の演習 (講談社文庫)

恋恋蓮歩の演習 (講談社文庫)

 

    ■47冊目『恋恋蓮歩の演習森博嗣

 Vシリーズ6作目。豪華客船に運び込まれた絵画を目当てに潜り込んだ保呂草潤平と、なぜか居合わせたいつもの3人。そして起こる殺人事件。殺人事件のトリックなんてあってないようなものですが、保呂草さんの手口が鮮やかで良いです。昨今のフィクションにはこういう怪盗成分が不足しているのではないでしょうか。

 

六人の超音波科学者 (講談社文庫)

六人の超音波科学者 (講談社文庫)

 

    ■48冊目『六人の超音波科学者森博嗣

  Vシリーズ7作目。このあたりになってくると瀬在丸紅子の元夫の林警部と愛人関係にある祖父江警部補がふびんになってきます。トリックに関しては特別な感想はありません。

 

捩れ屋敷の利鈍 (講談社文庫)

捩れ屋敷の利鈍 (講談社文庫)

 

     ■49冊目『捩れ屋敷の利鈍森博嗣

  Vシリーズ8作目。メビウスの輪のような構造の屋敷に保存された宝剣エンジェルマヌーヴァが盗み出される。その場に居合わせた保呂草潤平と西之園萌絵、国枝桃子。VシリーズとS&Mシリーズが交錯する一作。シリーズを読み通してきた人間ならば興奮せざるをえない展開ですが、トリックはあっさり。電話をしただけであっさり密室のトリックを解く犀川先生に「あんたは超能力者か何かか」と言いたくなりますが、ファンサービスと思っておきます。今作は四季シリーズまで読み通してから評価が変わる作品なので初読時はそれなりでした。

 

      ■50冊目『朽ちる散る落ちる森博嗣

  Vシリーズ9作目。時系列的には『六人の超音波科学者』の後で、舞台も同じ。トリックが物理トリックでよかったです。小鳥遊くんはなんでこんなに可哀想な目にばかり会うのか。