惑星間不定期通信

小説を書いています。本や映画の感想やその他なども書きます。

メキシコ旅行記 十八日目「腹痛、そのはじまり」

 水曜日。昨晩の過食のせいか腹が痛い。胃痛と下痢が襲う。食欲があるのがむしろ辛い。とはいえ、このあとのことを考えると、朝の時点での胃痛は大したものではなかった。

 朝はいつものカフェにてヨーグルトとフルーツをパフェにしたようなものを食べる。

 研究所に行くとメキシコ自治大学のスタッフが来ていた。

 午前中から何度もトイレに行ったが、その途中でラブラドールレトリバーに少し他の犬種が混ざったような犬に懐かれた。やたら僕の足にまとわりつき、靴を甘噛みしてくる。行動範囲が決められているのか、ある場所を境についてこなくなる。飼い犬かどうかはわからない。

 アレハンドロがコンビニに行き、缶に「緑茶」と漢字で書かれたお茶を買ってきたのだが砂糖入りだった。日本の緑茶ではない。午後の紅茶のような味がした。

 腹痛が酷くてあまり仕事ができずぐったりしていた。昼食は控えようと思ったが食欲はあるのでいちおう食べる。豚バラ肉のトマト煮だが、パイナップルが入っており肉が柔らかくなっており味も甘みがあって美味しい。あとクリームパイとコンソメスープを食べる。コンソメスープに安心感を覚えるようになってしまった。

「マゲイとアガベの違いは知っているか」

 研究所の敷地に生えているサボテンを指差し、エルネストが僕に尋ねた。

「どちらも似たような外見だが、マゲイは緑で、アガベは青色なんだ」

 帰りにはエルネストが車で送ってくれたが、途中で生えているマゲイとアガベを実際に見せてくれた。ついでにトウモロコシ畑について、それがトルティーヤになる過程について説明してくれた。

 コンビニにて夜食用に菓子パンとお菓子を買っておくが、ホテルに帰ると腹痛がひどくなりとても食べられる状況ではなくなってしまった。腹がズキズキと痛み、横になるとひどく痛む。

 僕はこれまで牡蠣に当たったことも、サルモネラ菌で食中毒になったことも生レバーに当たったこともあるが(こうして書き出してみると腹を壊しすぎである。胃腸が弱いくせに食あたりになりそうなものばかり食べている)、そのいずれとも違う痛みだ。まるで槍で突き刺されているかのような、もっと物理的な痛みだった。『白鯨』に出てくる勇敢な銛打ちクイークェグがナガス鯨に突き刺すような、古代マケドニア軍がファランクスの長槍で突撃してくるような、具体性に満ちた明確な痛みである。

 あまりの痛さに横になっていられなくなり、痙攣するように痛みに合わせて上半身を起き上がらせてしまう。空腹になってからさらに下痢が酷い。断続的な睡眠の合間にベッドとトイレを往復する。部屋に備え付けられていたトイレットペーパー二本を使い切ってしまった。

 食べ過ぎではこうならないだろう。昨日のステーキが良くなかったのだろうか。これはとうとう医者に行かなければいけないだろう。

 痛みのせいで一睡も出来なかった。