惑星間不定期通信

小説を書いています。本や映画の感想やその他なども書きます。

ナポリの男たちについて

2008年といえば僕が大学に入学した年だが、その頃ニコニコ動画はまさに全盛を迎えていた。当時のニコニコ動画といえば日本のクリエイティビティが結集しており、目まぐるしく日刊ランキングが変動していた。僕の周りの大学生はみな当然のようにニコニコ動画のアカウントを持っていて、アカウントを持っていない人間は時代遅れ扱いを受けていた*1。つまりニコニコ動画といえばネットの最先端と言って差し支えないコンテンツだった。

いまはもう動画サイトの代名詞といえばYouTubeであり、YouTuberたちが億万長者になる時代だ。だが僕はいま、とあるニコニコ動画出身のゲーム実況者にハマっている。

僕がハマっているのはナポリの男たちという4人グループ実況者である。彼らのシリーズ実況動画をほぼ全て見尽くし、チャンネル会員になり配信アーカイブを100本(約200時間分)見通した。「いまさらゲーム実況?」「いい年してまだニコニコ動画なんて見てるの?」という声が聞こえてきそうだが、あえて僕はいまこの記事を書いている。

当時夢中になってニコニコ動画を見ていた人はこれから紹介する彼らの動画を見てほしい。きっと懐かしい、深夜にパソコンの前でひとり腹を抱えて笑っていた頃の記憶を思い出すのではないだろうかと僕は思う。

 

ナポリの男たちとは?

ナポリの男たちは2016年6月に結成されたゲーム実況者「ジャック・オ・蘭たん」「hacchi」「すぎる」「shu3」の4人によるゲーム実況グループである。ニコニコ動画での活動を中心としており、最近ではYouTubeでも活動。有料チャンネル会員数は1万人を超えると推測され、音楽業界、出版業界にもファンが多く、米津玄師や岡崎体育などがファンを公言。2019年にはゲーム実況者としては初の企画展示会を開催。池袋マルイと梅田大丸を会場とし、チケットが入手困難になるほどの盛況となった。

 

ナポリの男たちの特長

いまやYouTubeにはたくさんゲーム実況動画が上げられている。芸能人や有名YouTuberもゲーム実況をする時代だ。グループ実況者なんて珍しくない。

では、ナポリの男たちは他の実況者たちと何が違うのか。

 大きな特長は、元々活動歴の長い個人実況者たちが集まって結成されたグループということだろう。

グループ実況者たちの多くは元々仲が良いリアルの友人同士であることが多い。しかしナポリの男たちはそれぞれ個人として人気を確立した実況者たちであり、それぞれの能力が突出している。彼らを見ていると、攻殻機動隊S.A.Cの荒巻課長の言葉を思い出す。

 

我々の間には、チームプレーなどという都合のよい言い訳は存在せん。
あるとすればスタンドプレーから生じる、チームワークだけだ。

 

 グループ実況というとふつうは掛け合いの面白さや和気あいあいとした雰囲気を売りとしていることが多い思う。

しかし、ナポリの男たちはグループ結成以前にほとんどメンバー間の交流がなく、お互いの顔や本名さえ知らない間柄だった。いまでこそメンバーの仲は深まっているものの、結成初期はぎこちない雰囲気を隠せていない。

 だからこそ、彼らは個人実況者として培ってきた企画力や創作力を武器としている。コント形式でマルチプレイしたり、一人用ゲームをリレー形式で回したり、メンバーの初プレイの様子を他のメンバーが実況する「見る男」スタイルなど、ただプレイするだけではない工夫を取り入れている。

チャンネル限定の毎週配信では毎回なんらかの企画を発案し、動画制作に限らずノベルゲーム、テーブルゲーム、詩、小説、楽曲を制作するなど、その創作能力が遺憾なく発揮されている。そしてついには配信内の企画が原作となって「りぼん」にて漫画化された。「来週こういう企画を作ってきて」という要求に毎回期待を超えるモノを作ってくる創作力の高さには本当に驚かされる。

また、これはマニアックな楽しみ方になるけれど、あまり仲良くない男たちがだんだん仲を深めていく様子を観察するのも面白い。最初はトークテーマがなければ雑談すら出来なかった人間たちが、お互いの実力を認め合い、24時間耐久配信などで交流を深め、結成2年目にしてようやくリアルで顔を合わせる、という流れは謎の感動がある。実況動画で彼らに興味を持ったのなら、ぜひチャンネル会員になって配信アーカイブを見てほしい。

 

■メンバーの紹介

ジャック・オ・蘭たん

 グループの発起人で最年少でありながらグループのリーダー的ポジション。ゲーム実況者として最古参のひとりであり、ゲームに対してコメントしつつプレイするスタイルを「ゲーム実況動画」と初めて名付けた実況者であり、別名「実況界の三葉虫

企画力の高さはメンバー随一であり、週間配信の企画案採用率は最も高い。ノベルゲームや楽曲の制作などコンテンツ創作力も高く、その創作能力でグループを牽引する。

 

すぎる

最年長でありながら少年のように喜怒哀楽をストレートに表現する「西の天才実況者」。瞬発力の高いツッコミと、独特なライフスタイルと天然な性格によるボケ的な側面を併せ持つハイブリッド関西人。

後述のhacchi、shu3を勧誘したグループ結成の立役者であり、天然で奔放な振る舞いの裏でメンバーを気遣い和を取り持つ潤滑油的存在。歌唱力や演技力も高く他のメンバーの創作物においてもその能力が発揮されている。

 

hacchi

2008年に“The Immortal“というマイナーゲームの実況動画においてゲーム実況の分野の動画で初めてニコニコ総合ランキング1位を獲得した「実況界の金字塔」。マイナーだったゲーム実況をひとつのジャンルとして確立させた伝説的な実況者。

先輩実況者(しんすけ)に「ゲームと実況以外に(人生の楽しみが)無い」と言われるほどの実況フリークであり、その分析力と妥協を許さない姿勢で動画全体のクオリティを高めている。金字塔の異名は伊達ではなく、豊富な語彙力と知識から繰り出されるトークと斜め上の動画センスはグループ実況においても発揮されている。*2

 

shu3

実況歴が他のメンバーと比べて浅く結成時の知名度は低かったものの、常軌を逸したやりこみ動画で知る人ぞ知る存在だった「やりこみのやべー奴」。一本のシリーズ動画を作成するための準備に半年掛けるのはザラであり、腱鞘炎寸前になるまでのリセマラなど視聴者の背筋を凍りつかせている。

オリジナルMOD制作でも知られており、シリコンバレー企業からヘッドハンティングされるほどのプログラミング技術を持つ。そのスキルは配信や動画制作にも生かされており、メンバーのアイデアを形にする縁の下の力持ち的存在。笑いの沸点が低く極度のゲラであり、グループのムードメーカーとなる太鼓持ち的存在でもある。

 

■最後に

ようやくですが、入門編となるような動画を紹介しておきます。

■古き良きニコニコのクローズドな笑いを思い出す動画

 

■4人の個性がそれぞれ発揮されていたほのぼのサイコパス(?)動画

 

グループに興味を持ったら、ぜひ個人動画のほうもおすすめします。。

ジャック・オ・蘭たん 

 

すぎる

 
hacchi

 
shu3 

 

いやもうhacchiもしんすけもルーツも実況に帰ってきたからみんな見ろって、と言いたいだけなんですほんと。誰もわかってくれないかもしれないけど。

*1:僕の周りの人間をサンプルとするには偏り過ぎている感は否めないけれど

*2:チャンネル会員になると印象が大きく変わります。いろいろな意味で