応募していた新人賞は二次選考で落選していました。16作/650作に残れず。
一次通過者に貰える講評はざっと以下の通りでした。
◯安心して読める文体はすばらしい
✗全体的に作者の運びたいストーリーが一直線に展開されている
✗もっと振り切った文体・展開にしていいのでは
✗登場人物のリアリティなどの面で読者の共感を得づらく、舞台設定の割に目新しさがない
◯タイトルは幻想的でよい
◯設定は魅力的
……こうして挙げてみると賛否でいうところの否のほうが多いですね。通読したときは結構褒められている気になっていたのですが。
文体が褒められているのは良かったです。前作の講評で文章力が低評価だったので。ただ「安心して読める」というのは文学としてはあまり喜ばしいものではありません。読者の価値観を揺さぶるのが文学であり安心というのはその対極です。
ストーリーが直線的であるという指摘は図星でした。今回、プロットから逸脱しないように気をつけながらストーリーを進めたので破綻はなかったものの直線的になってしまいました。主人公があまり苦境に立たされていないのも問題のひとつだったと思われます。要所要所で困難を設けるようにしたのですが、都度その場で対処できてしまい、主人公の立場が変化していないなと講評で指摘を受けて改めて気づきました。前作の講評(別の賞ですが)では「物語が整理されていない」と指摘されたので破綻を避けたのですが、今度は直線的すぎると言われ、バランスの難しさに頭を抱えたくなります。
講評を受ける前は「ラストが強引でリアリティラインが急落してしまったかなあ」と思っていたのですが、全体の流れが直線的であると指摘されたのは盲点でした。言われてみれば確かにそうとしか思えないのですが、指摘されないとわからないものですね。
登場人物の造形についても問題があり、目新しさがないとの指摘。新人賞においてもっとも忌避すべきは「目新しさの欠如」なのでこれは致命的です。脇役のキャラクターを類型に頼ってしまった感があり、その点は深く反省しました。ストーリーを前に進めることを急ぐあまり、総じてキャラクターの掘り下げが浅くなってしまったのも原因かと思います。
「設定が魅力的」と評価いただいたのは素直に喜びたいです。「上手いけれどアイデアが凡庸」と言われるよりも改善の余地がまだあるので。書いて書いて上手くなるしかないですね。
こうしてみるとプロの編集者の評価というのはすさまじく的確だなあと思いました。それが生業だから当然と言ってしまえばそれまでですが、きちんと精読していただいたことが伝わりました。なので落選という結果に未練はありませんが、やはり気落ちはします。
以下、弱音です。
落選のショックは一作目に比べて小さいですが、一次選考を通ったことにより「もしかしたら最終選考までいけるかも」という期待が生まれて、最終選考の電話連絡が来るとされている時期に凄まじいテンションの浮き沈みに襲われました。ほとんど何も手がつかず、正直何度も経験するのは辛いのでやめたいです。でももし最終選考に残っていたらさらなる気分の変動に襲われると思うのでもっと辛いんでしょう。
一作目に続き二次選考落ちという結果だけみると何も進んでいない気がして自分には才能がないのではとやるせなくなります。上で講評を分析した通り、前向きに努力すれば光はあるかもしれませんが、何にせよ向上を目指しながら小説を書くのはしんどいです。ただ私はそのしんどさを愛しているので、やっぱり小説をこれからも書くんだと思います。