惑星間不定期通信

小説を書いています。本や映画の感想やその他なども書きます。

2018年に読んだ本の感想

2018年はあまり映画を観られませんでした。近所のTSUTAYAが潰れてしまったせいです。町からどんどんレンタルビデオショップが消えています。ここ数年で4〜5件は潰れたのでは。マイナー作品を探すために数件駆けずりまわった思い出がありますが、今や地下鉄で2駅先の町まで遠出しないとレンタルビデオショップがありません。そこもいずれ消えてしまうのでしょう。それもこれも、動画配信サービスが充実してきたからでしょうね。自宅で簡単に観たいものを探すことができて、わざわざ店に返却する必要もありません。けれど、観たい作品がピンポイントになかったり、なんとなくぶらっと行って気になったものを適当に観るという機会が失われてしまったりで、あまり動画配信サービスというものに馴染めません。いちおう加入はしているんですが。

 その代わり、社会人になってから一番本を読むことができました。年末年始にこうして本の感想を書いているので、初めのうちは「きちんと読んだ直後に感想を書きのこそう」と思うのですが、年の後半になるについれてサボりがちになりますね。そして今苦労するという。毎年そんな感じです。後半の感想が雑なのはそのせいです。

 

豊饒の海 第三巻 暁の寺 (あかつきのてら) (新潮文庫)

豊饒の海 第三巻 暁の寺 (あかつきのてら) (新潮文庫)

 

 

 ■1冊目 「暁の寺豊饒の海・第三巻」三島由紀夫

大長編物では物語性よりも登場人物の人物性に囚われて自家中毒に陥ることがあるけれど、この作品ではそれに片脚を突っ込むかと思いきや、偏執的な性愛や美学的描写によって振り切っている。三島由紀夫の作品ではありがちなそれらの傾向は過去の二巻では意図的に温存されていたのかと思うほど、準主人公として観測者に甘んじていた本多は俄かにその人格を露わにした。その転向には戸惑いを覚えたけれど、異国での体験談と重厚な唯識論が本多の転向の伏線となっており、違和感は無く、最終巻に向けてその変遷が物語の帰結へ導いて行く。

 

 

豊饒の海 第四巻 天人五衰 (てんにんごすい) (新潮文庫)

豊饒の海 第四巻 天人五衰 (てんにんごすい) (新潮文庫)

 

 

 ■2冊目 「天人五衰豊饒の海・第四巻」三島由紀夫

豊饒の海最終巻はあまりの面白さに一気読みしてしまった。醜く老い衰えていく本多の前に現れた最後の転生。物語の最後は今まで積み上げてきたものを全て覆すようなものだったが、終わりも始まりも全て同じ地点で語られていたような不思議な感覚に襲われた気がした。果たして透は始めから転生者でなかったのか、本多の関与によって天人五衰となったのか。円環の物語の結末に、放り出すかのような門跡の一言は、これまでの物語的過ぎるほどのこの小説に非物語性を投げ込んでいる。とにかく、凄まじい本としか言えない。

 

 

Happy Youth of a Desperate Country: The Disconnect between Japan's Malaise and Its Millennials (JAPAN LIBRARY)

Happy Youth of a Desperate Country: The Disconnect between Japan's Malaise and Its Millennials (JAPAN LIBRARY)

 

 ■3冊目 「絶望の国の幸福な若者たち」古市憲寿

思ったよりも目新しい意見がないのは7年前の本だからだろうか。著書の意見が世の中に浸透してきたから? 既存の若者論を戦時中から概観する手際は小気味よかったが、後半に行くにつれて論拠が怪しくなり、誰かが言っていたことに対する感想に近くなっている気がする。とはいえ、例え感想だとしてもそれほど的外れでもないので、まあ面白いなあという感じ。てっきり学術書だと思っていたけれど、これは新書ですね。と思ったらやっぱり実際新書化されていた。

 

 

みみずくは黄昏に飛びたつ

みみずくは黄昏に飛びたつ

 

 ■4冊目 「みみずくは黄昏に飛びたつ」川上 未映子,村上 春樹

小説家による小説家のインタビューって意外と今までなかったのでは。村上春樹の「小説の作り方」について、かなり技巧的な部分に至るまで詳細に語られている。例えば、推敲を何校するのかといった具体的なことまで。メタファーやイデアといった形而上学的な物事について、作者はその意味が何かとは考えないようにしている、ということが興味深かかった。多くの情報はこれまでのインタビューやエッセイで既に語られたことかもしれないが、この形で聞き出してみせた川上未映子の聞き手としての力に感服した。

 

 

 

ラインマーカーズ―The Best of Homura Hiroshi

ラインマーカーズ―The Best of Homura Hiroshi

 

 ■5冊目 「ラインマーカーズ―The Best of Homura Hiroshi」穂村弘

日常の中で発せられた何気ない、しかし何気なくはない言葉が詩になる。普通に生きていたら見逃してしまう一瞬を穂村弘は逃さない。だからこそ突拍子もないように見えて親近感を覚えるような詩が書けるのだろう。

「ほんとうにおれのもんかよ冷蔵庫の卵置き場に落ちる涙は」

 

 

弟子・藤井聡太の学び方

弟子・藤井聡太の学び方

 

 ■6冊目 「弟子・藤井聡太の学び方」杉本 昌隆

藤井くんファンなら必読の内容(言われなくてもファンなら読んでいるか)。藤井くんの幼いころの話だけでなく、杉本七段の弟子に対する姿勢は将棋界にかぎらずあらゆる分野での教育(コーチング)に通ずるものがあり興味深い。将棋界の徒弟制度についても詳しく書かれており、そういったマニアックな知識についても得られてたいへん面白かったです。最近はテレビに引っ張りだこな杉本先生だけれど、テレビで見る優しそうな人柄だけでなく、教育に対して確固たる信念を持っていることがわかり、杉本先生のファンになりました。

 

 

村上春樹 雑文集 (新潮文庫)

村上春樹 雑文集 (新潮文庫)

 

 ■7冊目 「村上春樹 雑文集」村上春樹

村上春樹のエッセイやら文学賞の受賞挨拶やらはたまた結婚式の祝電まで、雑多ともいえる文章を詰め合わせたまさに「雑文集」。事故に遭い骨折するという不運に見舞われたので(それは半分くらいこの本を買いに行ったせいでもあるけど)、気分が沈んでいたのだけれど、村上春樹の文章はそういったときに不思議なくらい染み込むように良く響く。メカニズムはわからないけれど、とにかく僕にとってこの作家は特別なものなのだと再認識した。たとえハルキストと揶揄されようとも。

 

 

 

アンネの日記 (文春文庫)

アンネの日記 (文春文庫)

 

 ■8冊目 「完全版 アンネの日記アンネ・フランク

「夜と霧」の映画と本で描かれたユダヤ人虐殺の悲惨さから、この少女が辿った運命を想像すると息が苦しくなる。この日記に書かれているのは、聡明で前向きなひとりの少女の日常だ。隠れ家で他人との同居生活を送り、終わりの見えない戦時下においても、希望とユーモアを失わず自分の輝かしい将来と才能を信じ文筆活動をやめなかった、その強さは確かに後世に伝わった。だからと言ってまだ彼女が人々の心の中に生きているとは言いたくない。彼女は人類の愚行に押し潰されてしまった。その損失は、この日記の存在よりも小さかったはずはないのだから。

 

 

村上朝日堂はいほー! (新潮文庫)

村上朝日堂はいほー! (新潮文庫)

 

 ■9冊目 「村上朝日堂はいほー! 」村上春樹

 読んだことがあるような無いような。手持ち無沙汰になるとすぐに村上春樹のエッセイを読んでしまう。後述する「ジェノサイドの丘」と同時に読んでいて、そちらがあまりにヘビーだったので良い箸休めになりました。

 

ジェノサイドの丘〈新装版〉―ルワンダ虐殺の隠された真実

ジェノサイドの丘〈新装版〉―ルワンダ虐殺の隠された真実

 

 ■10冊目 「ジェノサイドの丘〈新装版〉―ルワンダ虐殺の隠された真実」フィリップ・ゴーレイヴィッチ

2018年で、読んでる最中の衝撃が大きかった本。

国営ラジオは「妊婦を殺すときは胎児を引きずり出してから殺すように」とがなり立てている。昨日まで夕食を分け合った隣人が曲刀を振りかざし殺しに来る。難民キャンプで餓死する女性と子どもたちと、救援物資で肥え太る虐殺者たち。百万人もの人間が虐殺された。ユダヤ人のようにシステマティックに殺されたのではなく、国民が国民を殺した。全部真実で現実だ。遠い国の惨劇など僕達には関係がない、未開の野蛮人たちが勝手に殺し合っているだけだ。果たしてそうだろうか。今日もどこかで誰かが殺され、僕らは知らずに生きている。

 

 

メキシコ麻薬戦争: アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱

メキシコ麻薬戦争: アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱

 

 ■11冊目 「メキシコ麻薬戦争: アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱」 ヨアン・グリロ

 市井の人々がどのようにして麻薬カルテルの抗争に巻き込まれていくのか非常に参考になった。翻訳者が原著の凄惨な描写をマイルドな表現に代えた、あるいはカットしたらしく、それがとても残念。多くの人に読まれるための配慮なのかもしれないけれど、真実は歪めるべきではないし、原著作者の思いを踏みにじる行為に近い。とはいえ、マイルドに代えられていたとしても、メキシコの麻薬戦争の悲惨さには目を覆いたくなる。メキシコの麻薬カルテルを舞台にした小説を書こうと思って本書を読んだけれど、現実をフィクションに落とし込むには、しばらく時間をおいて咀嚼する必要がありそうだ。

 

盤上の夜 (創元SF文庫)

盤上の夜 (創元SF文庫)

 

 ■12冊目 「盤上の夜」宮内 悠介

 どうしても小説を読むときに作者がどういう技法を使ってどういう意図で書いたのか、ということを頭の片隅で考えてしまうのだけれど、この作品はいくら考えて見てもそれが全く見えてこなかった。あるいは単純に作品が面白すぎたのかもしれないけれど、ここまで意図が巧妙に隠された小説を読むのも久しぶりだ。そしてこれが新人賞受賞一作目というのだからさらに驚く。

ボードゲームを題材にした小説はあまり知らない。競技者の人生、AIとの戦い、競技の成立の偽史など様々な方面で描く巧みさもありつつ、純粋な競技描写も面白い。ボルヘスっぽさもあり、SFっぽくもあり、ボードゲームという枠組みの使ってこのようなスリップストリーム文学を書くのはちょっと信じられないくらいの筆力だ。今ではすでに三島由紀夫賞を受賞、直木賞芥川賞候補にもなっているので、いまさら注目するのは遅いかもしれないけれど、他の著作も是非目を通したい。

 

村上ラヂオ (新潮文庫)

村上ラヂオ (新潮文庫)

 

 ■13冊目 「村上ラヂオ」村上春樹

 スペイン旅行中、長いバスの旅の間に読んだ。気軽に読めて気分転換になりますね。

 

コインロッカー・ベイビーズ(上) (講談社文庫)

コインロッカー・ベイビーズ(上) (講談社文庫)

 
コインロッカー・ベイビーズ(下) (講談社文庫)

コインロッカー・ベイビーズ(下) (講談社文庫)

 

 ■14冊目 「コインロッカー・ベイビーズ(上)」村上龍

 ■15冊目 「コインロッカー・ベイビーズ(下)」村上龍

キクが刑務所に入ってからが面白い。つまり下巻からが面白いことになるわけだが、上巻は非現実的で下巻はリアリズム的だからではなかろうか。上巻は存在し得ない近未来の狂った東京のイメージが強過ぎて今読むと食傷気味にも感じられるが、下巻からようやくコインロッカー・ベイビーズであるハシとキクの自分自身の物語が始まり、村上龍が上巻から巧妙に仕掛けていた周到な物語が実を結ぶ。破壊=外部に救いを見出したキクと、自閉=胎内のイメージを最期に見出したハシ。この小説をこんな風に締めることは、普通は出来ない。

 

ドン・キホーテ 全6冊 (岩波文庫)

ドン・キホーテ 全6冊 (岩波文庫)

 

 ■16冊目 「ドン・キホーテ〈前篇1〉」セルバンテス

 ■17冊目 「ドン・キホーテ〈前篇2〉」セルバンテス

 ■18冊目 「ドン・キホーテ〈前篇3〉」セルバンテス

 ■19冊目 「ドン・キホーテ〈後編1〉」セルバンテス

 ■20冊目 「ドン・キホーテ〈後編2〉」セルバンテス

  ■22冊目 「ドン・キホーテ〈後編3〉」セルバンテス

新婚旅行にスペインに行ったのだけど、至る所にドン・キホーテと従士サンチョの銅像が建っていたり(もちろんそれは訪れた場所が観光地だったからだろうけれど)、土産屋にはドン・キホーテの置物が売られたりしていて、それ程までに愛されている作品なのかと驚き、帰国してすぐに全巻買った。

世界で聖書の次に読まれているとのことだけど、およそ「普通の物語」では無い。メタフィクション的構造をとり、社会風刺や当時の流行小説のパロディに満ちている。一見するとなぜこの小説が世界的に通読されているのか分からないけれど、読み進めるうちにこの小説の面白さというか笑いどころは現在においても理解できることが分かってくる。「笑い」というのは物凄く批評的な行為であり、「普通」からあえて外すことで現実から異化されて笑いが生まれる。狂人ドン・キホーテの周りに普通の人間を配置するだけならこれほど面白くはならなかっただろうけれど、普通なようで普通では無い従士サンチョの存在がこの小説を現代にまで生き長らえさせているのではないか。

しばらく時間をおいて書かれた後編においては、前編の内容が作品世界に知れ渡っているというメタフィクションになっているが、人々がドン・キホーテをからかう様が行きすぎているというか、やりすぎなんじゃないのと思えてあまり好きになれなかった。

 ■21冊目 「難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!」山崎元,大橋弘

  Amazon kindleの格安契約期間に読んだ。ほとんど知っているような知識だったが読みやすくてわかりやすいので、最初に読んでおけばよかったかもしれない。今更読む必要はなかったですね。

 

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった

 

 ■23冊目 「コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった」マルク・レビンソン

一見してただの鉄の箱でしかないコンテナがいかに世界の経済を塗り替えたのか、コンテナを「発明」した人間の生涯から物流の歴史まで、丁寧に物語っている。物流の革命が、金の流れの変化を生み出し、街や人々の生活までダイレクトに繋がっていく様がよくわかる。なぜ僕たちは地球の裏側の製品をAmazonで買うことができるのか? どうして巨大な工場を海の近くではなく内陸の田舎に建てることができるのか? 今まで疑問にも思わなかったことの裏側にあったこの物語は、ただの鉄の箱が主役なのに驚くほどスリリングだ。

 

 

 ■24冊目 「人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの」松尾 豊

人口知能をテーマにした小説を書こうと思い、本書が入門として最適と目にしたので手に取りましたが、確かにこの本が一番網羅的かつ分かりやすい。 猫も杓子もAIな時代において、技術的な理解というのが大事なのだと改めて認識しました。

 

人工知能のための哲学塾

人工知能のための哲学塾

 

 ■25冊目 「人工知能のための哲学塾」松尾 豊

 人工知能をつくるためには、そもそも人間の知能とは何か、という命題に挑まなければいけない。これまでに組み上げられてきた哲学の体系を技術的に落とし込んでいくのはとても面白かったし、そのプロセスによって難解な哲学理論が理解しやすくなりさえした。

 

多動力 (NewsPicks Book)

多動力 (NewsPicks Book)

 

 ■26冊目 「多動力」堀江貴文

 言ってることは分かるけれど、どう考えても真似は出来ないなという感想。バイタリティの違いですかね。

 

 ■27冊目 「トコトンやさしい人工知能の本」

 そんなにやさしくなかったです。最先端の技術ワードを簡単に説明しようとしてむしろ難しくなっているような気がしないでも無い。

 

シンジケート

シンジケート

 

 ■28冊目 「シンジケート」穂村弘

 穂村弘以前/以後という時代区分をされてしまうほど、穂村弘の短歌はセンセーショナルでラディカルだ。このデビュー作で短歌の歴史を変わってしまうほどクールで、現在においても穂村弘のフォロワーはそこここに散見される。このシンジケートのあとがきとして収録されている短い散文は短歌に匹敵するほど衝撃的だった。短歌という枠組みに限らず、言葉に対する感覚、リズム、世界の切り取り方が卓抜していることがよくわかる作品。

 

小説家という職業 (集英社新書)

小説家という職業 (集英社新書)

 

 ■29冊目 「小説家という職業」森博嗣

 再読。森博嗣っていくらぐらい稼いでるんだっけ、ということを思い返したくなった。

 

武器よさらば (新潮文庫)

武器よさらば (新潮文庫)

 

 ■30冊目 「武器よさらばアーネスト・ヘミングウェイ

 高校生の頃に「老人と海」を読んだ時にはぴんとこなかったが、大人になってからヘミングウェイを読むとハードボイルドな文体が心地良い。

 

すべてがFになる (講談社文庫)

すべてがFになる (講談社文庫)

 
冷たい密室と博士たち (講談社文庫)

冷たい密室と博士たち (講談社文庫)

 

 

笑わない数学者 MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫)

笑わない数学者 MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫)

 

 

詩的私的ジャック (講談社文庫)

詩的私的ジャック (講談社文庫)

 

 ■31冊目 「すべてがFになる森博嗣

 ■32冊目 「冷たい密室と博士たち森博嗣

 ■35冊目 「笑わない数学者森博嗣

 ■36冊目 「詩的私的ジャック森博嗣 

 再読。最後に読んだのは高校生くらい? 犯人は覚えていてもトリックはいい感じにうろ覚えなので楽しいですね。科学技術に関しては今見ても古臭く無い、というかVRなどは現実の方がようやく追いついてきたくらいなので世界観がどれだけ先進的だったか改めて驚きます。むしろ、バスや施設内など公共の場で喫煙するシーンや平気で飲酒運転するあたりに時代を感じます。

 

エレンディラ (ちくま文庫)

エレンディラ (ちくま文庫)

 

 ■33冊目 「エレンディラガルシア・マルケス

滅びゆく港の漁村が繰り返し登場する。漁村は蟹に侵食されていたりシンプルに海に沈みそうになっていたり、天使と称される小汚い羽の生えた中年男性が漂着したりする。夢か現実か分からなくなるような御伽噺のような、それでも南米ならありえる話だよなと思ってしまうのは場の力でしょうか。

 

往復書簡 初恋と不倫

往復書簡 初恋と不倫

 

 ■34冊目 「往復書簡 初恋と不倫」坂元裕二

 2018年に読んだフィクションで1番面白かった。小気味いいリズムで牽引される会話劇の妙が素晴らしいのはもちろんだが、行間に無数の物語を想起させる力が凄まじい。身近な日常を描いていたと思ったら、急に不穏な描写が差し込まれて緊張が走る。最後に非現実的な着地を見せるのがちょっと残念だけれど、それを差し置いても有り余るほど素晴らしい「小説」でした。

 

紳士靴を嗜む はじめの一歩から極めるまで

紳士靴を嗜む はじめの一歩から極めるまで

 

 ■37冊目 「紳士靴を嗜む はじめの一歩から極めるまで」飯野 高広

突如として革靴にハマりました。この本はいきなり人間の足の骨の図から始まるほど基礎中の基礎を解説しており非常に勉強になりました。

 

Effective C++ 第3版 (ADDISON-WESLEY PROFESSIONAL COMPUTI)

Effective C++ 第3版 (ADDISON-WESLEY PROFESSIONAL COMPUTI)

 

 ■38冊目 「Effective C++ 第3版 (ADDISON-WESLEY PROFESSIONAL COMPUTI)」ス コット・メイヤーズ

 C++の聖書とまで言われているだけあって非常にためになることが書かれています。日々の業務ですでにノウハウとして身につけていることも多く「そうだったのか!」と目からウロコが落ちるとまではいきませんでしたが。情報系の学生なら、学部生のうちに読んでいるのでしょうね。

 

■39冊目 「ヴァリスフィリップ・K・ディック

 まさに怪作というかもはやほとんど小説の体を成していないのではと思えるくらい奇怪な小説。この教義というか「狂義」にどこまで付き合えるか?という問題な気がする。

 

バビロン 3 ―終― (講談社タイガ)

バビロン 3 ―終― (講談社タイガ)

 

 ■40冊目 「バビロン 3 ―終―」野崎まど

 終わらないんかい!という感想はもはやネタバレでしょうか。外連味のある文章は非常に好みであり、終始不穏なトーンが物語をぐいぐい牽引しており、一気読みしてしまった。しかし予想を裏切る展開とまでいかなかったのが残念。