前回の続きです。
■34冊目『東京するめクラブ』村上春樹、都築響一、吉本由美
寂れた観光地や旬を過ぎたリゾート、メインからは外れた観光名所など、「噛み続けてみれば味が出る」ような場所にスポットを当てたエッセイ集。または、村上春樹が知的な言い回しで名古屋をDISる本です。
僕は思うんだけど、名古屋という場所の特殊性は、そこが押しも押されもせぬ大都市でありながら、どこかしら異界に直結しているような呪術性をまだ失っていないところにあるんじゃないだろうか。結局のところ、僕ら(つまり名古屋市民のみならず普遍的な日本人である僕ら)自身の内部にある古典的異界=暗闇なんですね。
とまで書ききっている村上が『色彩を失った多崎つくると、彼の巡礼の年』で名古屋を舞台にした長編小説を書いたのは示唆に富んでいるわけですが、それはともかくとしてこの本はエッセイとして爆笑してしまうほどユーモアに優れています。
■35冊目『やがて哀しき外国語』村上春樹
また村上春樹。高校生か大学生以来の再読。なんとなく村上春樹のエッセイくらいしか読み気力が湧かなかったんです。村上春樹がアメリカに居を構えていたころのエッセイ。ひとりの日本人作家がアメリカという国に住むことについて。
今夜はパラシュート博物館へ THE LAST DIVE TO PARACHUTE (講談社文庫)
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/03/16
- メディア: 文庫
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■36冊目『今夜はパラシュート博物館へ』森博嗣
森博嗣の短編集。初読ですが幾つかの短編は別の短編集ですでに読んでいて、面白いと感じたのはほとんどそちらに収録済みの物でした。が、初読だった『ゲームの国-名探偵・磯莉卑呂矛の事件簿1-』の手の込んだバカバカしさといったら凄すぎてひっくり返りそうになりました(比喩表現)。
ところでぶるぶる人形がふるえていた建物が僕の研究室があった建物だったので衝撃を受けました。前読んだときはまだ研究室に配属されていなかったので…。
■37冊目『職業としての小説家』村上春樹
村上春樹のエッセイ読みすぎなのでは。これは新刊だからしょうがないか。村上春樹が小説家という職業について、というよりは自分自身についてを語ります。「毎日決められた量を持久走のように書き続けていく」ことについては散々インタビューで語られていますが、作品を完成した後に何度も書き直してブラッシュアップしていくことや、アメリカでエージェントを手配した話なんかは初耳で興味深かったです。近年話題になっているノーベル文学賞について色々書いていますが、村上春樹個人としては欲しいともいらないとも明言していないあたりがズルいなあと。
■38冊目『絶叫委員会』穂村弘
「でも、さっきそうおっしゃったじゃねえかよ!」
人々が何気なく発した言葉や街中の記述のなかで、ふと奇妙なものに出会う瞬間がある。そんな何気ない、けど改めて考えてみれば何かがおかしい表現に着目した一冊。こういう視点を持って生きていたい。穂村弘は出身高校が同じという理由で読み始めましたが、この人が持つ『眼』に出会えたことは人生の幸運と言えるでしょう。
■39冊目『世界の歴史(2) ギリシアとローマ』
1巻を読んでから何ヶ月経ってるんだと。全て読破できるのはいつになるのやら。小説や映画などでもよく題材になる時代なので面白く読めました。
■40・41冊目『エンダーのゲーム』オースン・スコット・カード
翻訳がイマイチと言われていた今作が映画化に合わせて新訳版となって発売されたので読みました。面白い! 現代のフィクションに多大な影響を与えるSFの古典と言っていい作品ですが、今読んでも良質なエンターテイメントとなっています。ピーターとヴァレンタインのパートが面白く、幼い天才であるエンダーが周囲の圧力を実力でねじ伏せていく様も良いのですが、それだけでは現代まで残る強度はなかったでしょう。衛星軌道上の宇宙ステーションで子供達が集められて訓練を受ける、って大好物すぎる舞台ですね。EGコンバットしかり、トップをねらえ2しかり、宇宙のステルヴィアしかり、こういうフィクションをもっと頂きたいものです。