惑星間不定期通信

小説を書いています。本や映画の感想やその他なども書きます。

進捗月報 2024/4月

■インプット

<<本>>

佐藤究「幽玄F」

面白かったが期待値が上がりすぎてしまいラストのカタルシスを存分に味わうことができなかった。三島由紀夫の「豊穣の月」が元になっているのだが作品の方向性はだいぶ異なる。期待値が上がりすぎてしまった所以もそこにあり、豊穣の月の第三巻「奔馬」のような迫真性とエンタメ性がせめぎあうような面白さを求めてしまったがさすがに荷が重かった。テスカトリポカのような悪意のドミノ倒しみたいな絶望感は無く、予定されていたラストに向けて偶然が折り重なっていくのは御都合主義的なものを感じてしまったのもマイナスポイント。とはいえ読み味は相変わらず鋭く、掴んだら離さないストーリーテーリングで一気に読むことができた。

 

市川春子宝石の国

市川春子は初期の短編集が出た頃に読んでその端正さと残酷さが共存する世界に惹かれた。初長編である今作も連載が始まったころから追っていたのだが、難解かつ連載が不定期になり読むのを止めていた。最終話掲載につきネットで無料になっていたので一気読みしたのだが、話はむしろ難解ではなく、絵の解釈が漫画的に不親切なのが難解だと思わせてしまう要因なのだと思った。そしてその難解さはある程度意図されたものだろう。キャラクターの特徴はあえて書き分けられていないのも、主人公の見た目がコロコロ変わりゆくのも、ストーリーとして必然だった。その必然さがわかるのが物語の後半であり、腑に落ちるまでが長い。また、それを差し引いても、アクションシーンは何をやっているかわかりにくいという欠点は残る。

宝石たちを主人公に据えつつ、じつは人間の業や浅ましさが描かれていたということがわかる終盤は、作者の周到さとその意図に寒気すら覚える。ひとならざるものを描き人間を暴き出すというのは初期短編集でも顕著だったが、長編にいたりスケールが天元突破している。長い間お疲れ様でした。

 

<<映画>>

本を読まない代わりに映画をよく見た。

グランツーリスモ

良かった。2回ほど泣いた。配役もドラマもオーソドックスすぎるほどオーソドックスだが「これで良いんだよこれで」感が詰まっていて満足。元レーサーのコーチが良い味を出してる。そういう意味ではトップガンに近い。
とはいえ気になる点もいくつか。特に、アカデミーの卒業レースで僅差で判定になった際に「たかが百分の一秒だぞ!」みたいなセリフがあるのだが、その百分の一秒を削るために命を賭けるのがレースではないか。そういう意味ではモータースポーツ好きが見ると許せない部分があるかもしれない。

 

「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」

バリおもろ。

まぁどんなもんかな、と見始めたら一気見してしまった。マリオワールドに行ってからのテンポの良さが異常。キャラクターの可愛さに心を掴まれ、ゲームからの引用にニヤリとし、目まぐるしいアクションに興奮し、王道的かつ良質なストーリーに感動した。
これをウェルメイドと言わず何と呼ぶ。ウェルメイドという言葉は、なんとなく小手先の技術で作られた商業作品と言うイメージがあるが、ここまで高められたらもはや揶揄の響きは一切ない。クッパが超可愛い。あとボムキングも。

 

■アウトプット

現在原稿用紙273枚。進捗率91%でいよいよラストスパート、と見せかけてまだまだ先がある気がする。GW中に最後まで書き上げればいいが難しいか。ちなみに書き上げたとしても、全体の完成度でいうと60%くらいなのでブラッシュアップが必要であり、どのみち完成は来月になりそう。さっさと書き上げて次の作品に取り掛かりたい。