惑星間不定期通信

小説を書いています。本や映画の感想やその他なども書きます。

進捗月報 2024/3月

例年3月末から4月初にかけて体調を崩している。仕事の繁忙期と、花粉症による肉体的・精神的ストレスによるものだと思われるが、去年も4月の頭に酷い胃腸風邪になって一週間寝込んだ。今年はそうならないように活動量を抑えて睡眠時間を増やした。残業時間は平常の2倍になりかなり強い抗アレルギー薬を服用して花粉症を抑えているが、今のところ目立って体調は悪化していない。このまま無事に過ごしたい。

 

■インプット

今月は映像作品はほぼ触れられず。

 

<<音楽>>

NMIXX「DASH」「Run for Roses」「Love me like this」

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Niziuを入口にしてK-POPにハマり、TWICE、ITZYとハマってきたわけだけどここにきて同じJYP事務所の最新女性グループNMIXXが僕の中で急上昇している。

デビュー曲はコロコロ頻繁に曲調が変わる当時の流行(いわゆるWADADA系)に乗った感が強く僕的にはヒットせず、メンバー脱退などのゴタゴタもあり追ってはいなかった。が、最新曲DASHの完成度に度肝を抜かれ、「Run for Roses」「Love me like this」に遡り彼女らの実力の高さを改めて認識させられたのだった。

第4世代ガールズグループで最高の歌唱力と言われるメインボーカルのリリー・ヘウォンを筆頭に、全員が他グループなら余裕でメインボーカルを張れる逸材である。その歌唱力を存分に活かした高難易度の楽曲はもはやアイドルの曲なのか?と思うほどである。少なくとも広い世代に口ずさんでもらえることを全く考えていない難易度だ。

歌唱力だけでなくルックスやダンスも当然レベルが高い。

とにかく彼女らの歌唱力を生歌で堪能できる以下の動画を見て欲しい。

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AJIKO「ラヴの元型」

AJIKOが再結成していたことを今更知った。最近は再結成ブームだが、この曲はかつての焼き直しではなく新境地を切り開いているのではと思う。ディスコ・ロックを基調としていながらポストパンク的な荒削りなループフレーズを奏でるリズム隊、そして浅井健一の緊張感のあるギターは、このバンドでないと出せないものが存分に発揮されている。

 

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<<本>>

トルーマン・カポーティ「遠い声、遠い部屋」

旧訳を図書館で借りて読んだ。

よくわからなかった。部分部分は素晴らしい描写もあるのだが、後半にいくにつれ混迷してくる。母を失い親戚の家で暮らしていた少年が、離婚した父に引き取られ地の果てのような小さな街を訪れるところから物語が始まる。導入は魅力的で、父の家に住まう不気味な人物たちや病気で一向に姿を見せない父など、ゴシックホラーめいたストーリーテーリングでページを繰らせるのだけれど、だんだんと現実にあった出来事なのか主格である少年の妄想なのか描写が曖昧になってくる。だいたい主人公の少年は13歳だということになっているが、作中の描写からして10歳より下に思える。13歳といえば第二次性徴も始まり精神的にもひねくれてくると思うのだが、作中の少年はさみしいから傍にいてと家の中で唯一の味方であるメイドに抱きついたりする。「ずっとお城で暮らしてる」みたいに何かしら歪さがあるのかと勘ぐったが、そういうわけでもなく、よくわからないなあということで終わってしまった。村上春樹の新訳だとわかりやすくなっているのだろうか。

 

西村賢太「小銭をかぞえる」

叫びたくなるくらい面白かった。西村賢太の作品を読むのは恥ずかしなら初めてである。僕が大学生の頃に芥川賞を受賞し、「そろそろ風俗でも行こうかと思っていた」という授賞発言でも有名となっていたのを覚えている。気になってはいたのだが日本現代文学からしばらく離れていたので読み逃してしまっていた。

最後の私小説家と呼ばれる通り、全ての作品が実際に作者が経験した実話である。が、とにかく主人公がクズすぎる。ロクに働かず、同棲している女は殴るわ、金は借りるわ、非難されると逆ギレするわ、とにかく典型的といっていいほどのDVヒモ男なのだが不思議と魅力的だ。クズさを覆い隠すことなく赤裸々に描きつつも、時代錯誤で韜晦な文章でそれをユーモアへと昇華している。ある意味森見登美彦の芸風に近いかもしれない。森見登美彦は頭の良い阿呆を演じてみせるが、西村はクズを正当化するクズを徹底している。それが小説上の演技なのか、あるいは本物のクズなのか。後者だとしたら恐ろしいがやはり後者なのだろう。

自らの様々なクズ行為によって主人公が因果応報としか言いようがない苦汁を散々なめさせられるのだが、小説のクライマックスでそのカタルシスが開放されると、もはや脳汁が出るくらいに面白い。開放の仕方もありきたりでなく、たとえば表題作では、主人公が怒り散らしそれに対して同棲女性が反論して言い負かされ、挙げ句暴力をチラつかせて同棲女性を屈服させ暴飲暴食に及ぶという、こうやって説明してしまうと本当に酷いとしか言いようがないのだがなぜかめちゃくちゃ面白い。クズすぎて笑えるのと、笑えないくらいの酷さに恐怖するのと、それでもやはり面白いと感じてしまう自分の感性に何か触れてはならない禁忌に触れているような気にさえなってくる。

今年は西村作品を読み漁ろうと誓った。

 

■アウトプット

3月の進捗は原稿用紙33枚、計237枚となった。ようやく最後の登場人物を出すことができて起承転結の転に入ったところ。ラストスパートになればペースが上がるかと思ったがそうでもなく、とにかくさっさと終わらせたいという気持ちに反して中々終わらない。このペースが染み付いてしまったのかもしれない。焦らず、けどのんびりもせず進めていきたい。