惑星間不定期通信

小説を書いています。本や映画の感想やその他なども書きます。

進捗月報 2024/2月

■インプット

<<本>>

米澤穂信「巴里マカロンの謎」

1月に読んだのだが感想を忘れていた。

米澤穂信の小市民シリーズがアニメ化されるということで、未読だった最新作を読んだ。前作「秋期限定栗きんとん事件」が2009年刊行で殆ど覚えていなかったのだが独立した短編だったので全く問題なかった。いくつかの謎は先に予測できたが小鳩君と小佐内さんのキャラクターがどのように物語を締めるのか?というところで展開を引っ張っている。秋期限定は結構ドロドロした重たい話だった気がするけれど、こちらは軽妙で楽しく読めた。高校生の頃に初めて春期限定と夏期限定を読んだときにその軽妙さとキャラクターの立て方に感動して、真似した作品を書いたことを思い出した。アニメを楽しみに待機します。

 

エルヴェ・ル・テリエ「異常」

海外のエンタメ文学を積極的に読んでみよう、という取り組みのもと一昨年の話題作を読んだ。1つの異常現象に巻き込まれた人々を描く多人数視点の作品なのだが、とにかくストーリーテリングが圧倒的なうえに、発生した「異常現象」がシンプルながら「え?どうすんの?」というシロモノでどうオチをつけるのか気になって先を読み進めた。オチは結構投げっぱなしな感じはあるのだが、現象ではなく人々を描くのが主軸だったのだとあらかじめわかっていれば不満はない。簡潔ながら研ぎ澄まされた文体で書かれており、突き刺さる言葉がいくつかあった。

ノスタルジーは悪辣だ。人生に意味があると錯覚させる。

 

<<映像作品>>

宇宙よりも遠い場所

南極を舞台としたアニメなので資料としてずっと観たいと思っていた。ただ影響を受けるのも避けたかったので、小説がある程度書き進められたのでいよいよ視聴した。

女子高生が南極を目指す、という異色のストーリーで、南極に行くためには「(医療機関がないから)死んでも文句は言いませんよ」という誓約書が必要になるので未成年が行くのは無理なのだけれど、南極観測事業が民営化されたという設定を持ち込むことでそれをクリアしているのに感心した。(そこ?)

南極に行くことになる女子高生は4人で、彼女たちの成長が丁寧に描かれていた。特に母親が南極で行方不明となり死亡扱いとなってため南極へ行くことを目指している報瀬(しらせ)の描かれ方はすごい。ネタバレになってしまうので多くは語れないが、ラスト二話の演出はアニメでしか描けない手法で感情をゆさぶられた。報瀬が母の死を受け入れて嗚咽するシーンの演技が凄まじく、今まで見た「泣く演技」で最も素晴らしいと思ったので声優は誰なのだろうとエンドクレジットで確かめたら「花澤香菜」さんのだったので心底驚いた。改めて聴くと花澤香菜さんの声以外の何物でもないのだけれど、全く意識していなかった。演技の幅とその演技力に改めて驚かされた。

 

リズと青い鳥

前から観たいと思っていた作品で、「宇宙よりも遠い場所」を視聴するためにhuluに加入したのでようやく観た。TVシリーズの「響け! ユーフォニアム」は観ていないので登場人物は全然知らないのだけれどあまり支障はなかった(はず)。

「あ〜希美が青い鳥と見せかけてみぞれが青い鳥なんだろうな〜」と予想しながら観ていた自分が浅はかだった。山田監督の作品は静謐な雰囲気にただならぬ不穏さが満ちている、と思う。心理描写を徹底的なまでに直接描かず、とはいえ迂遠ではなく明らかな形で視聴者に提示する。童話の世界だけは直接的であり本田翼の無垢を装った演技は鼻についたが、ラストの演奏シーンで言葉を介さずに自立と決別/未練と諦念を表現したのは素晴らしかった。

相手が求める言葉を言わずに、二人の少女はすれ違いながらも心を通わせる。不定形の未来に歩みを進めるラストシーンがただただ美しかった。

 

「映画:PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.1 罪と罰

PSYCHO-PASSシリーズは1期が一番好きで、2期に肩透かしをくらい、最初の劇場版で「うーん…」と消沈していたのだけれど、まあなんとなしに映画シリーズを見てみた。2期以降、文学作品の引用が寒々しくて辛かったのだが、今作はそれがあまりなかったのでよかった。物語としては、まぁ、2期の悪いところと良かったところが相殺されて、こんなもんかなという感じではある。これがTVシリーズだったら文句は無いのだけど、劇場版だと思って見るとちょっと物足りなさ過ぎるか。映画シリーズは1期の主要メンバーを深堀りしていくようなのでもう少し見てみようかなと思う。

 

■アウトプット

ようやく原稿用紙200枚に到達し、現在204枚になった。進捗でいうと2/3というところ。最後の登場人物は相変わらずまだ現れていないが、頭の先だけ見せ始めた。あと100枚で物語を畳める必要があるができるか怪しい。

エピローグについてはぼんやりと頭の中で出来上がっているが、そこに至るまでの道のりがまだ見えていない状況。最後の登場人物にどうやって退場願うか、それが決まっていない。思いつく方法はどれも安直に思えてしまう。最後のアイデアさえ決まれば終わりなんだけれど。とにかくあともうすこし。