惑星間不定期通信

小説を書いています。本や映画の感想やその他なども書きます。

進捗月報 2024/1月

■インプット

<<映画>>

羊たちの沈黙

原作小説を読んだので6年ぶりに映画版を見た。当然面白いのだが、恐怖が薄れてきたのかハンニバル博士が可愛く見えてくる。クラリスの最初の来訪で、他の囚人が無礼を働いたことで急に態度を変えるところとか必死過ぎてかわいい。

原作と比べるとクラリスの過去や内面描写などかなり省略されているのだということがわかる。そうすることでテンポは良くなっているのだけれど、物足りなさもある。小説を読んだときは冗長だなと思えてしまったのだけれど。帯に短し襷に長しということだろうか。あるいはないものねだりか。少し損をしたような気分になった。

 

<<本(小説)>>

トマス・ハリス羊たちの沈黙 下」

映画の感想と同じく。

 

シャーリィ・ジャクスン「ずっとお城で暮らしてる」

いきなりオールタイムマイベスト級の作品に出会ってしまった。あと10年早く読むべきだった。いや、読んでいたら影響を受けすぎたか。もしやこういうことなのでは、という予想は何も意味がなかった。最初からここは幸せな箱庭であり、それ以外の何者でもない。それこそが何もよりも恐ろしい。

途中まで読んで違和感を覚え、何気なく読み飛ばした最初の1ページに戻って戦慄した。主人公に対して抱いていた自分のイメージと実際の描写がどんどん歪んでいく恐怖。やがてそれは主人公だけでなく世界全体が揺らいでいく。

 

<<本(漫画)>>

阿賀沢紅茶「正反対な君と僕」

これもまたオールタイムマイベスト級。2024年は1月から飛ばしていて大丈夫だろうか。この後に出会う作品が無味に思えてしまうのではと心配になるくらい、素晴らしい作品に次々出会う。

最初は「オタクに優しいギャル」系のストーリーかと思ったら全然違った。思春期の自意識と、それに対する周囲の受容を丁寧に描写している。ひねくれる自意識に対して受け入れる人間がいる優しい世界。

驚くべきなのは、登場人物に悪い人間がほとんどいないことだ。学校モノには珍しくイジメの描写もない(過去にいじられたことがトラウマになっているというレベルのものはあるが)。敵対する悪役がいなくても、思春期の日常には充分に葛藤があるのだと思い知らされる。作者の引き出しの多さと、誰もが体験したことがあるようなアイデンティティ・クライシス言語化する能力に舌を巻く。尊い、という言葉はこの作品を形容するためにあるのでしょう。

 

<<音楽>>
TOMOO「TWO MOON」

関ジャムの年間ベストで取り上げられていたので聴いてみたがヘビーリピートしている。ソウルから影響を受けたノリのよい今風のポップスにそこはかとなく松任谷由実空気公団を彷彿とさせるレトロで空虚な郊外の原風景を感じさせる叙情がたまらない。

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■アウトプット

<<今書いているもの>>

1月は長期連休もあり目標枚数より多く書けた。現在進捗57%といったところ。半分を過ぎて心理的には少し楽になったか。そろそろ起承転結でいうところの転に入らなくてはならないが、まだメインの人物の最後の一人が登場していない。物語展開的な進捗は予定より遅いかもしれない。

キーボードを打つ手のおもむくままに予定外のことを書いてしまうと物語の収拾がつかなくなったり登場人物の性格が変わってしまうということは前作の執筆で学んだ。なので少しでも「書き飛ばしちゃったなあ」と思ったらボツにするようにしている。そんなことをしているので全然速度が上がらない。気持ちよく書けているときは原稿の進みが早いが、それだけアドリブ任せになっているという面もある。気をつけたい。

 

<<次に書くもの>>

ふと次の作品のアイデアが浮かんだ。少し前に警察組織の話が浮かんでいたが、それよりもいいアイデアだと思うのでこちらを優先させたい。僕の母校は普通科の他に専門科があったのだが、そこを舞台にしたいと考えている。メインの登場人物数人とログラインはなんとなく浮かんでいる。とにかく今書いているものをさっさと終わらせたい。

 

<<これまでに書いたもの>>

『ナゴヤ・ナゴヤ・ナゴヤ』を電子書籍として販売したことは先月の進捗月報に記載した。このブログとtwitter(現X)でしか告知していないが、何人か購入したと報告頂いた。またkindle unlimitedにも登録したのだけれど、kindle上でどれだけのページ数が読まれているのかウォッチすることができる。

購入頂いた、また読んでもらえている、ということはとてもありがたいことなのだけれど、『「買った」けれど「面白かった」と言われないのは消去法的に「つまらなかった」ということを意味しているんじゃないか』と思ってしまうめんどくさい自分がいる。そんななか、昔から私の作品を読んで感想を伝えてくださる方から、とてもポジティブな感想を頂いたのでホッとしました。

あまり他人からの評価に一喜一憂しないタフさがほしいなと思いながら、じゃあなんでわざわざ公開してるんだと自問自答する。なんというか、超然できたらいいのになと思う。思ってもできないけれど。