惑星間不定期通信

小説を書いています。本や映画の感想やその他なども書きます。

メキシコ旅行記 二十三日目「遥か果ての中国」

 月曜日。朝から少し寒い。

 朝食はいつものカフェにてトルティーヤがチリソースに浸されたものを食べる。皿全体に大量に盛られており食べきれず満腹になる。

 研究所にてひたすらプログラムを書く。色々とやることがあったのであっという間に時間が過ぎる。先週は腹痛でまともに働けなかったが、何もすることが無く隅っこでぐったりしているよりはマシだ。 

 昼食を取るために食堂に向かう途中ハビエロとすれ違う。

「今日の昼飯は中華料理だぜ」とハビエロは言った。

 しかして、昼食のメニューは牛肉とほうれん草のトマトソース煮込みであった。

 僕はハビエロに教えてあげたかった。中国ではトマトソースなんて使わないのだと

 もしかしたらメキシコ人が食べている中華料理は中華料理ではないのではないかという疑惑がふつふつと湧いてくる。よく考えたら中国は地球の反対側なのだから、歪んだ形で伝わってしまっているのかもしれない。中華料理に必要な甜麵醬やら花椒やらだって、たぶん高級スーパーにでも行かないと手に入らないだろう。こんな田舎の研究所の食堂にそんなものがあるはずがないのだ。

 名古屋市はメキシコと姉妹友好都市を結んでおり、小学校の給食にタコスが出たことがあるのだが、このメキシコで食べるタコスとは似ても似つかないような酷い味だった。それと同じ現象がメキシコの中華料理に起きているのかもしれない。
 
 四時頃には仕事を終えてチョルーラに戻る。

 夕食は広場沿いの店に行く。英語のメニューがあったので「これで好きなのが選べる!」と思うも、キノコのチーズフォンデュを頼んだらキノコしか入っていないものが出てきた。確かにメニュー通りなのだが、僕が欲しかったのはこれじゃないのだ。味は良いがひたすらチーズだけを食べ続けるのはつらい。なまじ内容がわかっていただけに起きてしまった出来事である。

 先輩はチレス・エン・ノガダを食べていたが「もう二度と食べたくない」と言っていた。悪い店ではなかったが、頼み方を間違えてしまった。

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日記の内容とは関係ないですが、ホテルの前はこんな感じのこじんまりとした路地になっています。

 店を出ると雨が降っており、やがて激しい雷雨になった。

 ホテルに帰ってパソコンをいじっていると、充電ができていないことに気付いた。心なしか部屋の電気がいつもより薄暗い。どうも雷雨のせいで電力が安定していないようだった。

 ホテルの電気が明るくなったときにアダプタを付け直したら充電可能になったが、それ以来アダプタの調子がおかしくなり、コンセントを抜き差ししないと充電されないようになってしまった。もしかしたら雷のせいで過電圧が加わり、壊れてしまったのかもしれない。

 電圧が元に戻り一安心したら今度は水道の勢いが弱くなる。風呂に入ろうと思ったのに入れなくなってしまった。当たり前のインフラの重要性を改めて感じながら、諦めるような気持ちで眠りに着いた。